2
National Astronomical Observatory of Japan
2018 年 2 月 1 日
No.295
2 0 1 8
●
天文台メモワール
田
●
田
教 「2
年
台 国立
学・ ル
天文学 賞」受
賞
2U
「ル
ール・ジ
ン・アワー 2
年
R
ンプリ」
●
2 年 「天文シ
レーシ ンプロジェクト
(
A) ーザーズ ー
ン 」
●
望遠鏡
鏡
トピ クス
2018
02
pa
g
e
NAOJ NEWS
国立天文台ニュース
C O N T E N T S
国立天文台カレンダー
● 6 日(土)4D2U シアター公開(三鷹) ● 10 日(水)幹事会議
● 12 日(金)運営会議/4D2Uシアター公開&観望会(三鷹) ● 13 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)
● 20 日(土)4D2U シアター公開(三鷹) ● 23 日(火)光赤外専門委員会 ● 24 日(水)先端技術専門委員会 ● 26 日(金)幹事会議 ● 27 日(土)観望会(三鷹) ● 30 日(火)プロジェクト会議
● 1 日(木)天文情報専門委員会 ● 3 日(土)4D2U シアター公開(三鷹) ● 7 日(水)幹事会議
● 9 日(金)4D2U シアター公開&観望会(三鷹) ● 10 日(土)4D2U シアター公開(三鷹) ● 17 日(土)4D2U シアター公開(三鷹) ● 21 日(水)幹事会議
● 24 日(土)観望会(三鷹) ● 28 日(水)プロジェクト会議
●3 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)
●5 日(月)天文データ専門委員会/太陽天体プラズマ専 門委員会
●7 日(水)幹事会議
●9 日(金)運営会議/4D2Uシアター公開&観望会(三鷹) ●10 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)
●17 日(土)4D2U シアター公開(三鷹) ●20 日(火)幹事会議
●24 日(土)観望会(三鷹) ●29 日(木)プロジェクト会議
2018 年 1 月 2018 年 2 月 2018 年 3 月
表紙画像
重力波望遠鏡 KAGRA(かぐら)の防振装置「Type-A」 とインストールに関わったスタッフたち。国立天文台の 研究員、技術員だけでなく、総研大、東京大学、法政大 学などからの多くの学生の貢献がありました。
背景星図(千葉市立郷土博物館)
渦巻銀河 M81画像(すばる望遠鏡)
ダブルシャドウ。三鷹キャンパス TMT 棟前小路の冬景 色…。
23
24
03
02
14
● 表紙
● 国立天文台カレンダー
研究トピックス
重力波天文学の夜明けと KAGRA の今
正田亜八香(重力波プロジェクト推進室)◎山岡均のキーナンバーで読み解く宇宙03キーナンバー40 山岡 均(天文情報センター広報室長)
天文台メモワール
● 「天翔ける…」 渡邊鉄哉(太陽観測科学プロジェクト) ● 「退職のご挨拶」 花田英夫(RISE 月惑星探査検討室) ● 「退職のご挨拶」 佐藤克久(水沢 VLBI 観測所)
受賞
● 田中雅臣助教が「2017年秋季 台湾国立中央大学・デルタ電子 若手天文学者賞」 を受賞!
● 4D2U 映像が「ルミエール・ジャパン・アワード 2017年度 VR 部門グランプリ」 を獲得!
おしらせ
● キモい科学で海外記者にアピール 都築寛子(天文情報センター)
● 平成29年度「天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)ユーザーズミーティ ング」報告 大谷友香理(天文シミュレーションプロジェクト)
● すばる望遠鏡第8回主鏡再蒸着 沖田博文(ハワイ観測所)
● 「East Asian Young Astronomers Meeting(EAYAM)2017」開催報告 市川幸平(光赤外研究部)
● 「IDL 講習会(FITS データ解析編)」報告 亀谷和久(天文データセンター)
● 日本科学技術ジャーナリスト会議の国立天文台見学会 縣 秀彦(天文情報センター)
● 「CAP2018 in 福岡」直前情報
-史上最大規模の天文系科学コミュニケーション会議が日本で- 縣 秀彦(CAP2018 in 福岡 事務局長)
● 平成29年度永年勤続者表彰式
● 人事異動/編集後記/次号予告
シリーズ
「アルマ望遠鏡観測ファイル」23
泡にかこまれた年老いた星 ポンプ座 U 星
平松正顕(チリ観測所)/山村一誠(JAXA 宇宙科学研究所)
12
13
研
究
ト
ピ
ッ
ク
ス
2016年2月11日、天文学史に残る発見が 発表されました。アメリカの重力波望遠鏡
LIGOによる重力波の直接観測です。これは
ブラックホールの合体現象からの重力波をと らえたものでした。検出された日付にちな んでGW150914と名付けられています。ブ ラックホールの合体現象を観測したことも初
めてであれば、太陽の約30倍ほどの質量をも
つブラックホールを観測したことも初めてで した。
また、2017年に入り中性子星連星★01合体
からの重力波も検出されました。ここでは重 力波単独の観測ではなく電磁波望遠鏡との同 時観測が行われ、同じ天体から発せられたと みられる電磁波をとらえることにも成功して います。これにより、私たちの身の回りにあ る重い金属がどうやってできたのかなど、宇 宙の進化の過程の一端が明らかになろうとし ています。ガリレオが初めて望遠鏡を宇宙
に向けてから約400年、人類は主に光を用い
て様々な宇宙の姿を明らかにしてきましたが、 ついに重力波という新しい観測手段を手に入 れ、更なる宇宙の深淵へと足を踏み入れよう としています。
重力波の直接観測からちょうど100 年前、 アインシュタインが一般相対性理論を提唱し ました。一般相対性理論によると、重力波は 時空の歪みに焼き直すことができます。そし て質量をもった物体が運動したときに生じた 時空の歪みの変動が波となって伝搬したもの
を重力波と呼びます。特に2つの重い星の合
体や、超新星爆発といった激しい天体現象か ら振幅の大きい重力波が発生すると考えられ ています。
とはいえ、重力波の効果は簡単に検出でき
るものではありません。例えばGW150914
の場合、地球と太陽までの距離が水素原子1
個分だけ変化する程度の歪みでした。これを とらえるために様々な形式の重力波検出器が
提唱、開発されていますが、LIGOなどで採
用されており現在主流となっているのがレー ザー干渉計を用いたものです。
レーザー干渉計では、図01のようにレー
ザー光をビームスプリッタと呼ばれる特殊な
鏡で2つにわけ、両腕の先にある鏡で反射し
て返ってきた光を重ね合わせます。光は波
の性質を持っているので、2つの腕の長さの
距離の差によって重ねあった光の強弱が変わ ります。重力波が来ると時空が歪み、この腕 の長さが変化するので、重力波の信号が重ね あった光の強弱として現れる仕組みとなって います。
実際に重力波をとらえるためには、重力波 以外の要因によって重力波の振幅以上に鏡が
正田亜八香
(重力波プロジェクト 推進室)
図01 レーザー干渉計の模式図。レーザー光をビームスプリッタに向かって出射し、光を2つ
に分けた後、各鏡からの反射光を再びビームスプリッタで重ね合わせます。この反射光の波の位 相差によって光検出器に入る光の強度が変化するため、重力波による空間の歪みを検出すること ができます。
★01 中性子星連星 中性子星は、恒星が超新星爆発した あとにできる星です。直径数10km 程度に太陽とほぼ同じくらいの質量 が詰まっており非常に密度が高いこ とが特徴です。このような中性子星 ふたつがお互いがお互いの周りをま わって連星をなしているものを中性 子星連星と呼びます。
★newscope<解説>
重
力波天文学の夜明け
レ
ーザー干渉計
04
揺れないようにすること、そしてレーザー光 に大きな雑音がのらないことが必要不可欠で す。これらが重力波をとらえるのに十分なレ ベルに到達するのには、複数の光共振器を用 いた光学系や、安定なレーザーの開発、地面 など外部の振動から鏡を守る防振装置といっ た多岐にわたる最先端技術が必要とされます。
重力波検出器の開発が始まった1960年代以
降★02、約50年以上の時をかけて先人たちが
積み重ねてきた技術の上に現在の発見がある のです。
日本でも重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)
の開発が進められています。KAGRAは岐阜
県飛騨市神岡の山中に長いトンネルを掘り、
3kmの腕を持つレーザー干渉計を構築しま
す(図02/12-13ページ画像)。ほかの望遠鏡 にない大きな特徴は、地下という地面振動や 温度変化の少ない静かな環境に作られている こと、そして熱雑音★03を低減するために鏡
を20 Kの極低温に冷却することです。中で
も国立天文台の重力波プロジェクト推進室で
は、天文台先端技術センター(ATC)との協
力のもと、KAGRAの鏡の地面振動による揺
れを低減する防振装置の開発(図03)や、鏡
の非一様性などによって散乱したレーザー光 が及ぼす雑音の低減などに携わる補助光学系 の開発、次世代での感度向上に向けた技術開 発を中心にKAGRAに携わっています。 2016年3月、KAGRAでは簡略化された光 学系を用いた試験運転が実施され、プロトタ
イプ防振系のインストールや、3kmという長
い距離でのレーザー光のアライメント方法の 確立、計算機による制御・自動化などに成功 しています。試験観測後アップグレードが行
われ、2017年までに図04で示されたように、
8つもの防振装置を次々とインストールしま
した(図05~08)。特に3 kmの腕の鏡用の防 振装置(Type-A)は、全長13 mに及ぶ世界最大
級の振子型防振装置で、2階建て構造になっ
たトンネルから吊るされており、最下部に低 温冷却部を持ちます。このインストールには
常温のタワー部分だけでも4か月ほどを要と
する巨大な装置ですが、これによって観測帯
域での鏡の揺れを神岡の地面振動の1億分の
1以下に低減させることが可能となります。
また、防振装置の役割は揺れを抑えるだけ ではありません。レーザー干渉計の共振状 態を保つよう、鏡を動かして制御するのも 防振装置の役目です。鏡を含む防振装置の振 子の各段にはセンサー・アクチュエータや モーターがついており、これらを用いて鏡の 動きや向きをコントロールすることができま す。実際、これまでにインストールされた鏡
図03 KAGRA で使用される防振装置の概略図。
重力波信号への影響の大きさに応じて4種類の防振装 置を用いています。段数が多く、高さが高いほど防振 性能が向上しますが、その分インストールや制御も複 雑になっていきます。
K
AGRA の今
図04 KAGRA の鏡の防振装置の構成。MCe、MCi、MCo は2016年の試験運転前に、紺色
で囲われた防振装置はその後2017年までにインストールされました。残りの防振装置も2018年 中にインストールされる予定です。
図05 インストールされた各種防振装置の全体写真。Type-A に関しては、13m に及ぶ巨大
装置のため一部しか見ることができません。
★02
1960年代当初の重力波望遠鏡は、 「共振型」と呼ばれる方式が主流で した。1968年、ウェーバー氏が巨 大なアルミニウムの円柱を用いた重 力波望遠鏡を用いて重力波を検出し たと発表しました。この発表は検証 不十分とする意見が多くなっていま すが、これがきっかけで重力波望遠 鏡の開発が活発になったと言われて います。
★03
物体中の分子は、常に微小ながらラ ンダムな運動をしています。これは 周囲とのエネルギーのやりとりに よって生じますが、この運動ですら 重力波望遠鏡にとっては雑音になり ます。重力波望遠鏡への影響を低減 させるためには、物体の温度自体を 下げたり、エネルギーのやりとりが 少ない(散逸の小さい)素材をミ ラーやその支持機構に選ぶことが必 要です。
やビームスプリッタの向きを制御し、3 km先 までレーザー光を導入、その鏡の向きを調節 してレーザー光を打ち返し、再びビームスプ リッタまで安定に光を戻すことにも成功して います。
その他にも、大きく広がったレーザー光を 集光して光検出器に導入するための光学系や、 光の散乱によって生じる雑音を低減する装置 などの開発が天文台内で進められており、今 年度中にインストールされる予定となってい ます。
KAGRAは今後、残りの防振装置や鏡をイ ンストール、低温鏡での簡易干渉計の試験運 転を行った後、最終的な干渉計構成で観測を 開始する予定です。2018年から2019年ごろ を目途に本格稼働を開始し、LIGO、Virgoの 同時観測に参入することでより広い観測網の 実現を目指しています。これまでの観測網 にKAGRAが加わることによって、重力波の 到来方向などといった重力波信号のパラメー タ決定精度が向上することはもちろんですが、 重力波の偏波★04分離などといった望遠鏡3
台だけでは解析しきれなかったパラメータに 対しても制限を付けることが可能となるなど、 新しい物理の進展も期待されています。 また、KAGRAは世界に先駆けて新しい技 術を取り入れた重力波望遠鏡でもあります。 望遠鏡の更なる高感度化のためには、地下へ の建設や鏡の低温化といった技術が必要とな ると考えられており、KAGRAの開発は次世代
型重力波望遠鏡技術の礎 となることでしょう。 連星合体以外で重力波 源として期待されている 超新星爆発やパルサーか らの重力波の検出もまだ 実現されていません。今 後のKAGRAの参入、お よび重力波望遠鏡の高感 度化によって、これから も新しい発見が期待さ れ て い ま す。 そ の 他 に も、宇宙重力波望遠鏡や パルサータイミングなど、 様々な手法での重力波検 出へのアプローチが開発 されています。私たちが 様々な波長の光で宇宙を 観測するように、重力波 も波長によって見える天
体現象が変わってきます。様々な重力波望遠 鏡を開発し、広い波長領域で重力波を観測す ることでも、巨大ブラックホールの進化過程 の解明や、一般相対論の検証、ハッブル定数 の検証など、様々な宇宙や基礎物理が明らか になると期待されています。
まだまだ重力波天文学は始まったばかりで す。我々は宇宙のかすかな声にもっと耳を澄ま せていきます。重力波によって新たな宇宙の姿 が明らかになるのをどうぞご期待ください。
そ
の先へ
図06 PR2のインストールメンバーと鏡。赤く
なっている部分が保護膜の塗られた PR2鏡になって います。
図07 BS のインストールメンバーと Type-B 倒立振り子。倒立振り子によってより低周波数
帯での防振が可能となります。
図08 低温に冷却される Type-A 防振装置の最下部。
★04
光に偏光があるように、重力波にも 時空が歪む方向に応じていくつか偏 波が存在します。これまでの観測で は、テンソルモードと呼ばれる干渉 計の片腕が伸びて反対側が縮むよう な歪みのみを仮定していますが、そ れ以外の偏波を測定するためにはよ り多くの望遠鏡が必要です。この観 測により、新しい視点での重力理論 の検証が可能となります。
06
国立天文台天文情報センター広 報室長の山岡 均です。国立天 文台ニュースの記事をもっと深 く理解するために、キーナン バーに注目して解説します!
イラスト/藤井龍二
読み解く宇宙
で
の
今回の キーナンバー
40
03
2017年10月17日(日本時)、重力波天 体GW170817の電磁波観測に関する記
者会見を実施しました。予言から100年
あまりで重力波が直接検出されたこと、 そしてその天体が電磁波でも観測された ことは、まさに「世紀の」研究成果です。
成果の重要性については、3ページから
の研究トピックスを含めて、多くの研究 者がさまざまな媒体で語っていますから、 ここではその点は省略し、「世紀の」記 者会見がどのように実施されたか、記録 に残しておきたいと思います。
重力波天体からの電磁波が観測された であろうことは、科学雑誌“Nature”が
わざわざ「噂」として記事を掲載したこ ろから、多くの研究者は勘付いていまし た。そこへ、すばる望遠鏡の広報チーム から、この天体に関する記者会見の希望 が寄せられました。重大な内容に身も引 き締まる思いでしたが、その時点では日 程も確定せず、都心の会場の手配もでき ませんでした。
10月3日、大きなニュースが飛び込ん できました。前年に発表された重力波の 直接検出がノーベル物理学賞を受賞した のです。もちろん国立天文台でも、トッ プぺージおよび重力波プロジェクト推進 室ウェブページで特報しました。翌日の
朝刊は重力波一色で、あとに続く電磁波 対応天体が注目を集めるだろうことは確 実です。
ノーベル賞受賞に際して記者発表を実 施した重力波の研究者から、電磁波観測 された天体についても記者発表を実施し たいという要望が出てきました。電磁波 観測と別途の会見となると、記者さんも 分散して取材が行き届かなくなる恐れが あります。ここは、重力波観測と電磁波 観測を一体化した記者会見とする一手で す。関係者の合意を取り、一か所でまと まった記者会見を開くことになりました。 重力波の研究者は英語でのやりとりとな
01 見てきたような天体イラスト。そのようすは、天文学の素養を活かして描かれた。
「重力波天体の電磁波観測」
記者会見の舞台裏
るため、講演内容と質疑応答の同時通訳 も手配しました。
ここで問題になったのは、開催時刻と 会場です。重力波観測の国際的な取り決 めで、記者会見は16日23時(日本時) 以降に実施しなければならないことにな りました。欧米では昼の時間帯で、解禁 時刻に合わせた記者会見となるのは必定 です。しかし日本では深夜にあたり、こ の時刻に記者会見を開いても記者さんに 迷惑です。翌朝の実施を決めたのですが、 そこでも問題が生じました。記者会見で
よく使っている会場は9時にならないと
開かず、同時通訳の設営を考えると会見
の開始は11時以降になってしまいます。
ところが記者会見へ出席する研 究者のうち何人かは、正午前に は会場を離れなければならない ことがわかりました。もっと早 い時間から仕込みができるとこ ろを探した結果、東京大学本郷 キャンパスの理学部小柴ホール を会場とすることになりました。 理学部広報の皆さんには、早い 時刻の開場や、共同発表大学と のテレビ会議、会見のインター ネットライブ配信★01など、ここ
でなければ不可能だったさまざ まな要望を実現していただきま した。改めて御礼申し上げます。 次は記者発表資料の制作で す。ここでも多方面の助力をい ただきました。観測された天体 は点源ですから、それだけ見て もイメージがわきません。光を 放つ天体を「見てきたかのよう に」描いたイラストが必須です が、今回は内容を外部に明かすことがで きません。広報室内部で制作したイラス
ト(画像01)は、まさに「見てきたよ
うな」ものとなり、さまざまなメディア に取り上げられました。また、すばる望 遠鏡で撮影された点像にズームアップし ていく動画★02を、HSCビューワを用い
て制作していただいたのですが、わずか
会見3日前の提案を実現してくださった
ハワイ観測所のスタッフにも大いに感謝 するところです。
これらの資料は、記者会見前に記者さ んに提供し、記事を執筆する準備をして もらうことが必須です。しかし今回の重 力波共同研究の取り決めでは、通常の記
者会見の場合よりも条件が厳しく設定さ れ、記者さんに報道解禁時刻の厳守につ いて書面で誓約してもらうこととなりま した。また、会見の案内でも研究内容に 触れることができない取り決めでした。 そのようなご不便を記者さんに強いたこ とも申し訳なく、おわびする次第です。 当日の設営でも各所にご協力をいただ きました。特に、国立天文台のバックパ ネルを運搬するために公用車を手配して 同乗し、会場で設営していただいたプロ ジェクト広報にも大いに感謝いたしま す。広島大学ロゴも布で用意していただ き、研究者がこれらを背後に記者からの
質問を受けるようす(画像02)は、テ
レビを始め多数のメディアを賑わしまし た。朝のニュースでは欧米の会件を取り 上げ、昼から夜にかけての報道では日本 の会見を扱っていただいたところも多く、 これほどの反響を呼ぶ発表は、広報担当 としても一生モノだと感じています。 今回の天体現象は、私も大学院生時代 に研究対象にしたことがあります。大質
量星の連星が、2度の超新星爆発を経て
中性子星連星を形成する確率の計算です。 連星の衝突合体を重力波でも観測するこ とで、電磁波だけの「多波長天文学」を 超えた「多面的天文学」が始まる、と機 会あるごとに解説してきました。昨今カ
タカナ10文字の呼称が優勢ですが、私
は自分が書く稿では「多面的天文学」を 続けていきたいと考えております。ご理 解いただければ幸いです。
02 記者会見後の囲み取材を受ける広島大学(現スタンフォード 大学)の内海洋輔さん(左)と理論研究部の田中雅臣さん(右)。 今回の研究成果において、内海さんは光学対応天体の観測で、田 中さんはそのモデル構築で、それぞれ大きく貢献。ヒーローイン タビューを彷彿。
今回のキーナンバーは、何と言っても 40だ。40 Mpc(1億3000万 光 年 ) と い う今回の重力波天体の距離は、最初の検 出としては想像をはるかに超える近さ で、こんなに近いものはもう100年は出 現しないのはないか、とまで言われるほ どだ。おとめ座銀河団の2倍強、典型的 なIa型超新星ならば13等台も期待され るほどで、今回の可視光対応天体は超新 星と比べると4等程度、すなわち2ケタ 近く暗いこともわかる。今後、KAGRA も参入した重力波観測で、さらに近い別 種の重力波天体が検出されることも期待 したい。
03 すばる望遠鏡(ハワイ)と IRSF 望遠鏡(南アフリカ)によって観測された GW170817(画像中央)。天体 の明るさと色の変化に注目してほしい(画像:国立天文台/名古屋大学)。
08
入台してからあっという間に38年の歳月
が流れてしまいました。切掛けとなったの は「ロケットや人工衛星による天体のUV 観
測・Space Astronomyの計画推進・天体物理
学の研究に従事する助手1名-採用後の所属 は太陽物理部になります」という天文月報の 公募文でしたが、これは当時の東京大学東京 天文台としては画期的なもの(大博打?)で、 採用時の緊張感は未だによく覚えています。 1年目から「たんせい4号」を運用しつつ
「ASTRO-A」の総合試験に臨むということで、
早くも内之浦、駒場通いが始まりました。東 京大学宇宙航空研究所として最後の打ち上 げとなった第7号科学衛星は田中捷雄先生の
肝煎りで「ひのとり」と命名されました★01。 十倍の重量を誇るNASA/ESAのSMM★02
に伍して「ひのとり」が成果を得ることがで きたことは非常に幸いでした。内之浦での衛 星運用は僅か2年弱しか続きませんでしたが、
乗鞍のコロナ観測が明けてから内之浦へ転戦 して慣れない衛星運用をする乗鞍コロナ観測 所職員の皆さんの努力は並大抵ではなかった かと思います。僅かの学生や若干の研究所ス タッフを除けば、科学運用の7割方は天文台
職員でこなしていたことになります。 3年目の昭和57年には当時新しく開発され
ていたS520★03型単段ロケットに姿勢制御
装置(CN★04)を付けた観測ロケット2基を
使用して、オリオン座領域の紫外線多色測光 (S520-3CN)、太陽極端紫外線の撮像分光観
測(S520-5CN)の飛翔実験をいずれも成功
裏に行うことができました。その年の11月
になって小平桂一先生が天文台へ異動して来 られ、分光部が設立されて私も所属すること になりました。この時点において天文台も先 生もJNLT建設に向け大きく舵を切ったわけ
ですので、その4年前より宇宙研でWG活動
をしていた「UVSAT」計画は実質的に消滅し
たことになるでしょう。
入台4年目の夏から(西)ドイツへ留学する
機会に恵まれました。2年間の充実した留学
を終えて帰国してみると「ひのとり」の成功 を受け、NASAとの協議が進展して、太陽衛
星観測の後継計画「HESP★05」が現実味を
帯びてきました。このため分光部は銀河系部 とに二分になり、残った職員は次期太陽観測 衛星「SOLAR-A★06」(後の「ようこう」)計
画に邁進することになりました。銀河系部と の連携として3基目のロケット(S520-8CN:
おとめ座銀河団の紫外線撮像)の飛翔実験は この時に行いました。そして国立天文台誕生 の折には、太陽物理学研究系に復帰すること になるわけです。
入台7年目からはまた長く続く宇宙科学研
究所(当時)通いが始まりました。天文台か
らは観測機器と衛星システムとのI/Fを見
るということで幹事(小杉健郎助教授・常田 佐久助手[天文学教育研究センター:当時] および渡邊)が、最初は駒場へ、その後は淵 野辺へ、勤務時間の少なくも半分以上、出張 することになりました。マスタープランを変 更することなくスタートから打ち上げまでき っちり5年の歳月で軌道に投入にされた「よ
うこう」はその後10年3か月にわたり活躍し
大きな成果を挙げました。日米英の広範な国 際協力のおかげで、相模原詣に来る海外研究 者も多くなり、世界中の太陽研究者と知己を 得ることができたことは私にとって生涯の財 産になりました。それでも長期にわたる衛星 運用は相変わらず大変で、「ようこう」の活躍 で太陽関連分野の研究者の興味や学生数が一 気に膨れ上がったとはいえ、天文台の運用負 担分は多い時期には5割近くにも達し、運用
当番をお願いする立場としても研究環境の不 公平感は払拭できないものがありました。痛 恨の極みは、運用当番の死亡事故が発生した こと、金環食で「ようこう」が姿勢を失った ことです-依然として後悔の念に堪えません。 「SOLAR-B」(後の「ひので」)の検討が始
まったのは「ようこう」の打ち上げ直後のこ とですので、私の天文台生活の後側3分の2は
「ひので」との関わりということになります。 「ひので」を実現することは、天文台の太陽関
連部門がその総力として飛翔体観測に傾注す ることを意味します。組織の事情により、所 属は太陽物理学研究系から電波天文学研究系、 法人化後はSOLAR-B推進室、ひので科学プ
ロジェクトと変化しましたが、一貫して「ひ ので」に関わることができたのは幸いでした。 太陽の紫外線分光観測は様々な要因が重なり、 それまであまり陽が当たらない状況でしたが、 極端紫外線撮像分光望遠鏡(EIS)がNASA採
択の3鏡面光学系の提案を覆し2面系で「ひの
で」に搭載することに決断して大きな成果を 得ることができたことは最大の喜びです。ま た衛星の運用負担やデータポリシーについて も打ち上げ以前より国際チームにて議論・検 討して、天文台にとっては提案したことがあ る程度実現する状況が生まれたことも嬉しい ことでした。
この38年間、携わった3つの衛星プロジェ
クトの規模は指数関数的に増加し、それに伴 いお世話になる方の数もまた非常な勢いで増 え続けました。あらためて感謝申し上げる次 第です。
天文台メモワール
天翔ける…
渡邊鉄哉
(太陽観測科学プロジェクト)
01 M3S-2号機「ASTRO-A」の射場公開にて。
02 「ようこう」飛翔前夜、フレア望遠鏡もなかっ た頃の太陽若手連。
★01:向坊隆総長(当時)より”天翔けるアストロAの目よ 耳よ太陽フレアの知らせ伝えよ”という祝電が届きました。 ★02:Solar Maximum Mission
★03:直径520mmの単段(single stage)ロケット ★04:Controlled Nose cone
★05:High Energy Solar Physics
1978年に緯度観測所(当時)に入所し、約
3年間の三鷹勤務等もありましたが、基本的
にずっと水沢で研究活動をさせていただきま した。緯度観測所時代のことを知っている少 数派の一人です。その間、国立天文台への改 組、プロジェクト制への移行、法人化等があ り、環境はずいぶん変わりました。入所した 当時は今に比べてのんびりしていました。地 震研究所の学生から水沢に来てもあまり違い を感じなかったので、日本全体がのんびりし ていたのかもしれません。そのかわり、何で もじっくりと取り組むことができ、いろいろ な技術を身につけ、その後の機器開発を進め ていく基礎を固めることができました。その 後は、競争原理、研究の管理等の強化が進ん でいく大きな流れの変化を体験してきました。 例えば、研究の自由は死語になりつつあると 感じています。研究の自由とは、何をやって も良いということではなく、国家等の権力の 影響を受けないで、その学問分野の発展のた めに研究者の考えで行うことができる自由と 思っていましたが、最近、某大学の入学式で、 研究テーマは社会が何を必要としているかを よく考えて決めるべきという趣旨の講演があ ったのが印象に残っています。
さて、自分自身を振り返ると、某都立高校 (何人かの先輩達が天文分野で活躍している)
の自由な校風が、その後の人生の根底に流れ ていたような気がします。大学では、周りが 生物医学系の人が多く、一時はその気になっ て生物系の本を読みあさっていましたが、あ るとき、数学の講義の最中に、黒板にぎっし り書かれた数式を見て、こういうのが見られ なくなるのは寂しい! と無性に思い、結局 地球物理学に進みました。竹均均著の「大陸 は動く」の影響も大きく、やや不純な動機と して、世界中に行ける! という期待もあり ました。お陰様で、南極まで行かせてもらい ました。アイスランドに行ってプレートが実 際に生まれているところをこの目で見たいと いう夢は、結局まだ実現していません。 好きな言葉は「どうにかなる」。世間では あまり良い意味に使われていませんが、何か
困難にぶつかったときに、猛烈に努力してい くと、そのうちに自分の才能に応じた解決策 が見つかることを意味します。才能の限界を 知ると言い換えることもできます。実際どう にかなってきました。運も強かったと思います。 ただし、危ないこともありました。三鷹で 過ごした2002年から2004年は、日本の月探
査衛星「かぐや」の準備が佳境に入っていた 頃で、時間はいくらあっても足りません。朝
6時半から夜8時過ぎまで研究室でほとんど
休みなしに仕事した結果、だんだんと何かが おかしいと感じるようになり、ある日、寝て いる間に体がぐるぐる回るようなめまいに襲 われ、病院で調べてもらったところ脳内部で 出血していることがわかりました。そのうち だんだん字が書けなくなっていくのを経験し、 これはまずいと思い、それ以後は、どんな場 合でも体を最優先に考えるようになりました。 そのまま亡くなってしまう人も珍しくない中 で、最終的には自然に正常に戻り、また、ど のような体調が続くと深刻な事態になるかを 身をもって体験できたことは不幸中の幸いで あると同時に、運の強さをあらためて感じま した。
国立天文台での研究生活でもっとも印象に 残っている、あるいは大変だったことは「か ぐや」をメンバーの総力で成功させたことで す。私を含めてメンバーの多くは、他の分野 から入り、この分野では初心者なので、宇宙 開発は文化が違う、言葉も違うと、しばらく 混乱していました。最終的に、何人かの犠牲 者を出しながらも大成功に終わり、後世に残 るデータを出し、海外からも高い評価を受け、 多くの研究者、学生との新たな交流も生まれ たことは、その後の自信につながりました。 長い間お世話になり、ありがとうございま した。
天文台メモワール
退職のご挨拶
花田英夫
(RISE 月惑星探査検討室)
かぐやの打ち上げ半年前のひととき(2007年)。
「しらせ」が南極昭和基地付近に停泊して、まず重力測 定(1992年)。
10
緯度観測所時代、入所した1974年当時は
米国の州立大学との共同観測で水沢にNNSS
ドップラー衛星軌道決定のトラッキング局が 設置され、機器輸出入通関処理や大学からの 多数の学生さん達と一緒に観測や装置改良を 行いました。共同観測終了後はNNSS観測
チーム(画像01)を編成して続行、GPS測位
の要となるWGS-84測地系で日本付近の精度
が確保されているのは、水沢設置のNNSSト
ラッキング局で10年にも及ぶ衛星追尾観測
を行った結果だと思っている所です。 NNSSに続く宇宙新技術を模索していた水
沢にレーザートラッカーを導入すべく、概算 要求と並行してよく当時の東京天文台堂平観 測所へお邪魔し技術習得をさせて頂きました。 実際に電子回路を組んでレーザートラッカー へ実装もさせて頂いたのですが、この経験は 後に水沢へ移転した天文保時室での1秒パル
ス信号の計測に役立てることができました。 この当時は皆さんのご指導を得て、春秋の 測地学会、天文学会、そして冬の経緯度研究 会等に盛んと発表させて頂きました。人工衛 星軌道論教科書を基にFORTRANで衛星軌
道解析プログラムをカードへパンチ、水沢設 置の国際極運動観測事業(IPMS)用大型計
算機によりNNSSトラッキング局からの人
工衛星データを利用して解析、日本海溝の重 力変位が衛星軌道へ及ぼす影響等を調べたり、 後にはNNSS衛星やGPS衛星の二周波生デ
ータから電離層全電子数を推定するアルゴリ ズムを基にして水沢近辺の電離層変動を調べ たりしました。
水沢が目指す高精度宇宙技術観測手法は究 極的にVLBIしかないということで、長年光
学観測を続けていた水沢へ電波天文観測手法 を導入することになりました。譲り受けた
3.3 m鏡で皆さんと共に駆動制御系を開発し
て電波天文観測を行いました。この時の駆動 制御系は、当時製品化され始めたパソコンか らアンテナ側電力駆動系を遠隔制御するシス テムで、その後多くの方々のご尽力で三鷹か らご提供頂いた6 m鏡へこの概念を踏襲した
駆動制御システムを組み付けてVLBI観測を
行いました。6 m鏡の設置観測場所が野辺山、
しかも45 m鏡観測棟から7~800 m離れた場
所ということで、信号が減衰することなくま た高安定に伝送できるようにと位相安定化光 ファイバーを導入しました。続いて10 m鏡
のシステム開発や観測も行いました。 VLBIには高安定な信号伝送が必要という
ことで多くの方々のご指導を得て、水沢の皆 さんと一緒に能動型超高安定基準信号伝送シ ステムを開発、ありがたいことに論文博士を 頂きました。入所時の「勉強して形にしなさ い」とのご指導に応えることができたかなと の思いです。
水沢が目指していた当初のVLBIは地球回
転観測用途でしたが、国立天文台への改組を 機に、より広範な研究目的に応え得るVLBI
観測装置としてVERAプロジェクトがスター
トしました。建設期は水沢局担当、観測期に 入ってからは保守グループを担当させて頂き ました。
東日本大震災発生時には停電が長引くと判 断、保時室時計群のどれか1台でも維持して
中央標準時の時計面を保時し続けようと、24
時間持続UPSを抱えていたVERA用水素メ
ーザー周波数標準器を節電モードに切り替え、 昼夜給油し続けて小型発電機からの給電を絶 やさなかった対応に台長賞を賜りました。 入所当初から「光学緯度観測から新技術へ の橋渡しを支えること」が私の任務と自覚し つつ過ごさせて頂いてきましたが、振り返り ますと「地球回転から銀河回転」(画像02)
への道のりだったなとの思いでおります。長 い間皆さんのお世話になりましたが、幾ばく かでもお役に立てたでしょうか。長い間、誠 にありがとうございました。
天文台メモワール
退職のご挨拶
佐藤克久
(水沢 VLBI 観測所)
01 NNSS観測チーム。
田中雅臣助教が
「2017年秋季 台湾国立中央大学・デルタ電子 若手天文学者賞」を受賞!
国立天文台理論研究部の田中雅臣助教 (※)が「2017年秋季台湾国立中央大学・
デルタ電子若手天文学者賞」を受賞しま した。田中氏は超新星爆発や中性子星合体 のような、時間変動する天体現象を研究す る「時間軸天文学(タイムドメイン天文 学)」に貢献したことが認められ、本賞の 受賞となりました。
若手天文学者賞は、天文学の分野で優れ た業績を成した若手研究者を対象として、 台湾の国立中央大学天文研究所とデルタ電 子が設けている賞です。受賞者を短期で台 湾に招聘し、台湾の若手研究者らと交流を はかることで、台湾の研究者らの意欲向上 につなげることを目的としています。受賞 者は、国立中央大学天文研究所で専門家向 けの講演を行うほか、デルタ電子財団にお いて一般向け講演会、さらに台中市の高校 で天文学の授業を行います。受賞者が行う 最前線の天文学研究について、専門家のみ ならず多くの人々を対象に話す機会が設け られます。
田中氏の専門分野は、超新星爆発や中性
子星合体のような宇宙における爆発現象の、 観測的・理論的研究です。田中氏は、爆発 現象を起こす天体の電磁波の性質を理論的 に予測し、実際にすばる望遠鏡などで観 測することによって、天体の爆発現象の メカニズムを明らかにしようとしていま す。2013年から田中氏が行ってきた中性子
星合体のシミュレーションによって予想さ れていた電磁波放射が、2017年に発生した
重力波源GW170817の電磁波観測で実際に
検出され、中性子星合体によって重元素が 大量に生成されていることを明らかにしま した( http://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20171016
参照)。
天体の明るさなどの変化を時間軸に沿っ て調べることで、その天体で起こっている 物理メカニズムを調べる天文学は「時間軸 天文学(タイムドメイン天文学)」と呼ば れています。今回、田中氏はこの分野にお ける貢献が認められ、受賞となりました。 受賞した田中氏は以下のように喜びを語り ます。「この度は栄えある賞を頂き光栄に 思います。国立中央大学での講演だけでな く、デルタ電子財団、台中一中での一般講 演の機会も頂き、貴重な経験をさせて頂き ました。また、中性子星合体からの重力 波・電磁波観測の成果を発表した直後の訪 問だったため、台湾の研究者だけではなく 一般の方々や高校生にも最新の研究成果を 伝えられたことを嬉しく思っています」。 本賞を受賞した田中雅臣 理論研究部助教(左)と
台湾国立中央大学の周景揚 校長(右)。2017年10 月18日、国立中央大学校長室にて(クレジット: 国立中央大学)。
4D2U映像が「ルミエール・ジャパン・アワード 2017年度VR部門グランプリ」を獲得!
4次元デジタル宇宙(4D2U)プロジェク
トが制作したVR映像「天の川銀河紀行」
(シミュレーション:馬場淳一、可視化: 中山弘敬)が、先進映像協会が実施するル ミエール・ジャパン・アワード2017年度 VR部門でグランプリを獲得しました。こ
の映像は、様々な物理メカニズムを取り入 れた大規模シミュレーションによって作ら れた天の川銀河の姿を、科学的に正しく可 視化し映像化したものです。
ルミエール・ジャパン・アワードは、先 進映像協会による表彰活動で、国内で制 作・公開された優れた先進映像を表彰する ことでコンテンツの拡大と品質向上を目的 としています。今回出品したVR映像「天
の川銀河紀行」は、普段私達が得ることの できない視点からの天の川の姿を忠実に描 き出したという点、また、教育効果が期待 できるという点などが評価され、ルミエー ル・ジャパン・アワード2017年度VR部門
グランプリを獲得しました。2017年国際放
送機器展(Inter BEE 2017、2017年11月15
日から17日、幕張メッセ)にて行われた表
彰式では、映像の制作を行った4D2Uプロ
ジェクトの中山弘敬専門研究職員とシミュ レーションを行ったJASMINE検討室の馬
場淳一特任研究員が登壇し、トロフィーを 受け取りました。
4D2Uプロジェクトは、最新の観測やシ
ミュレーションで得られた天文学データ を科学的に正しく可視化した立体映像を 制作するプロジェクトです。映像を制作 した中山氏は以下のように喜びを語りま す。「4D2Uではデータを“どのように可
視化するか”ということだけでなく、“ど のようにVR映像化するか”という技術面
や、“どのように一つの作品としてまとめ るか”という作品性にもこだわりを持って 映像を制作しています。そのような点も高 く評価され、たくさんの応募の中、グラン プリをいただけたことをとても嬉しく思っ ています」。
受賞した映像は、国立天文台のスーパー コンピュータ「アテルイ」を使って数か月 を費やし計算された結果を映像化したもの です。シミュレーションを行った馬場氏 は「普段夜空の見える星々や“天の川”が、 実は数千億個の星が円盤状に分布した“天 の川銀河”であることや、ガス雲の中で星 が誕生し母体のガス雲を破壊すること、銀 河の中で星がダイナミックに動き回るよう すなどがわかると思います。映像化技術に 加え、このような天文教育面も高く評価し て頂けたようで嬉しく思います」と、喜び とともに映像の見どころを語ります。 受賞作品「天の川銀河紀行」( https://www.nao.
ac.jp/gallery/weekly/2017/20170704-4d2u. html )。2017年6月、国立天文台4D2U プロジェク ト制作。(クレジット:馬場淳一、中山弘敬、4D2U プロジェクト、NAOJ)
●この映像は、文部科学省 HPCI 戦略プログラム分 野5「物質と宇宙の起源と構造」および計算基礎科 学連携拠点(JICFuS)の元で実施したシミュレー ション結果を可視化したものです。
12 KAGRA の干渉計を構成する3km の腕。幅約10m のトンネルが続きます。この真空ダクトの中を
レーザー光が通って干渉計を構築します(p03-05研究トピックス参照・図02/撮影:飯島 裕)。
14
海外の科学記者には国立天文台の知名 度は低く、研究成果そのものを知って いても国立天文台が関わっていること を知っている人は少ないという現状があ
ります。そこで、昨年10月下旬、ハロ
ウィンで賑わう米国サンフランシスコで、 World Conference of Science Journalists という科学メディア向けの国際会議に
ブース出展を行いました。今回は国内4
つの大学・研究機関合同での出展です (共同ブース出展期間:10月26日~28日 /全体の会議期間:10月25日~30日)。
本会議の参加者は70か国を超える科学
メディア1364人です。科学記者はインパ クトがあるものが好きなので、ハロウィ
ン に ち な み、 出 展 テ ー マ を「JAPAN's CREEPY SCIENCE(日本語タイトル: 日本のキモい科学)」としました。共同 で作ったポスターには、日本古来の妖怪 のイラストや各機関自慢の
キモい画像を掲載。国立天 文台は「魔女が作った怪し い 秘 薬(?)」 と い う タ イ トルで、太陽の粒状班とそ れを撮影したひので衛星の 説明を載せました。ブー ス来訪者には最新の研究 成果のプレゼンだけでな く、Mitakaや「 お ウ チ で 国立天文台(後述)」といっ た実演、そし て最新研究成 果のプレスリ
リースの配布を行いました。 ハロウィンといえば仮装と いうことで、著者も魔女の 帽子をかぶりました。 来場者の反応も良く、遠 くの方からキモい画像をめ がけて一直線に向かってく る記者も多かったです。多 くの記者から好評で「こう いうインパクトがあるもの を探していたのよ。」「記事
を執筆するのに参考にしたいから写真を 撮っていい?」と言っていただきました。 さらにPulitzer Prizeを受賞したことも ある著名な科学記者が「今回の最優秀展 示賞はこのブース」とツイッターで紹介。 「この展示もあなたの魔女の帽子も良い
わね。」とお褒めの言葉も頂きました。 また、山岡広報室長が行った最新研究 紹介では、科学記者たちは特にノーベル 賞を受賞した重力波の研究に熱心に耳を 傾けていました。
「おウチで国立天文台」も大変人気があ りました。「おウチで国立天文台」は、 箱の中を覗くことで、国立天文台の施設 や宇宙のシミュレーション動画を上下左 右前後方向から見渡せる商品です。たと えば、すばる望遠鏡を見ると、あたかも 自分がすばる望遠鏡の目の前に立ってい るような気分が味わえます。すばる望遠 鏡について初めて聞いたという人も多
かったのですが、VRを通して体験する
ことで、多くの記者がすばる望遠鏡や国 立天文台の観測装置に興味をもってくれ ました。
ALMAやすばる望遠鏡、TMTについて 知っている人も多くいました。しかしな がら、日本が関わっていること、そして 日本では国立天文台が関わっていること を知っている人はほとんどいませんでし た。今回、国立天文台を覚えてもらえた ことで出展した意味はあったかと思いま す。今後も海外メディアを含めた海外向 けに国立天文台の認知度があがるように、 創意工夫しながらインパクトがある国際 広報を進めていきたいと思います。
科学で海外記者にアピール
都築寛子
(天文情報センター)お
し
ら
せ
No.
01
2 0 1 7
10
2 6 - 2 8日本のキモい科学のポスター。海外では珍しい日本の妖怪のイラストと キモい画像が目を引いた。粒状班を見て、「これは何?」と興味をもつ記 者多数。
ポスターの前でパシャリ。都築(前列右から2番目)は魔女の帽子姿、山岡広報室長(後列右から1番目)は骸骨 のカチューシャを装着。
ࠠࡕ
ࠠࡕ
ࡕ
ࡕ
ࠠ
ࠠ
ࠠࡕ
ࠠࡕ
ࡕ
ࡕ
ࠠ
平成29年11月28日、29日の二日間に
わたり、平成29年度天文シミュレーショ
ンプロジェクト(以下CfCA)ユーザー
ズミーティングが国立天文台三鷹キャ ンパスすばる棟大セミナー室で開催さ れ ま し た。CfCAで は 共 同 利 用 の た め スカラ型並列計算機Cray XC30「アテ ルイ」、重力多体問題専用計算機である 「GRAPE」、比較的小規模な計算を行う ための「計算サーバ」を運用しています。 また、大容量のデータを保管するための 大規模ファイルサーバや計算結果の解 析・可視化用の「解析サーバ」といった
機材の運用も行っています。CfCAユー
ザーズミーティングは毎年1回開催さ
れ、現在のユーザのみならず現在はユー ザではないものの将来的に計算機利用を 考えている潜在的ユーザからも参加を得 ています。本ユーザーズミーティングで は、こうした人々が一堂に会し、得られ た成果の発表や今後の運用に関する議論 を行っています。
今年度の参加者は66名、口頭発表は
28件、ポスター発表は18件でした。参 加者の研究分野は、プラズマ物理、太陽、 銀河、星・惑星形成、ブラックホール、 超新星、宇宙論、大規模構造など多岐に 渡ります。今年度は特に、連星中性子星 合体が観測されたことを受けて、それに 関連するテーマの発表が多くなされまし た。また、研究に応用される新しいコー ドやアプリケーションの開発についての 発表も行われました。国立天文台内の参 加者からは、すばる望遠鏡HSC(Hyper
Suprime-Cam)や TMT(Thirty Meter
Telescope) に 関 連し、CfCAの計算 機を利用して得ら れた成果も発表さ れました。 研究分 野は異なるものの、 それぞれの講演は シミュレーション天 文学というキーワー ドで繋がっています。 CfCAのユーザーズ ミーティングは 若 手が非常に多いのも特徴です。口頭発表、 ポスター発表と通じて活発な議論が多く 交わされました。
ミーティングの初日には、CfCAの計
算機運用報告や計算基礎科学連携拠点の 活動および来年度からの計算機運用に関
する報告が行われました。CfCAの計算
機を使用して出された研究成果の発表さ れた論文は、一昨年度と比較して昨年度 の分の本数が大きく増えていることが 報告されました。今年度はCray XC30、 GRAPE、計算サーバのいずれもユーザ 数と稼働率が増加していることが報告さ れました。Cray XC30においてはその傾
向が顕著であり、平均稼働率は95 %を
超えていました。計算機の利用が増加し ていること自体は喜ばしい一方、混雑が 原因で、大規模なジョブの実行には長い 待ち時間が発生してしまっているという 現状が示され、今後の運用における改善 案について議論が行われました。現在 利用されているスーパーコンピュータ Cray XC30のリース期間は今年度で終了 し、来年度からは新しくCray XC50★01
が導入されることが決定されています。 この新スーパーコンピュータに関する報 告は、今回のユーザーズミーティングに おいて参加者が最も興味を持っていたト
ピックでもあります。ミーティングでは 新スーパーコンピュータの詳細の発表お よび議論が行われました。特にスーパー コンピュータの運用案については、計算 機環境や利用者に配分される計算資源な どの、個々の研究に深い関わりをもつ要 素があるため、参加者から多くの意見や 質問が寄せられました。その後に催され た懇親会においても、和気藹々と次期シ ステムへの期待や今後の研究の展望につ いて、参加者が話し合う様子が見られ ました。来年度の計算機運用に向けて、
CfCA一同も改めて気を引き締める機会
となりました。
平成29年度
「天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)ユーザーズミーティング」報告
大谷友香理
(天文シミュレーションプロジェクト)お
し
ら
せ
No.
02
2 0 1 7
11
2 8 - 2 9口頭発表。
運用報告での議論。
ポスター発表。
懇親会。
★01
16
国立天文台ハワイ観測所では数年に1度の頻度ですばる望遠鏡の主
鏡の再蒸着を実施しています。主鏡の再蒸着はハワイ観測所における 最大の保守作業で、多くの時間と費用、さらにマンパワーが必要と なる作業です。今回は2017年10月2日~12月14日にかけて一般共同
利用観測を停止し、第8回目の主鏡再蒸着及び関連保守作業を実施し
ました。再蒸着した主鏡の反射率は波長400 nmで92.1 %、600 nmで 90.5 %、800 nmで85.5 %となり、前回とほぼ同じ値が得られました。
なお今回の第8回目の再蒸着は当初予定では2016年8月に実施する
予定でしたが、ミラーハッチ故障とその修理のため延期されたもので した。ミラーハッチを直さないことには主鏡の運搬ができないため、 まずミラーハッチ修理を行い、その後に主鏡再蒸着を行うことになり ましたが、人的・時間的にかなり厳しい状況が続きました。蒸着作業
で使用する大型機器の試運転は直前に行わざるを得ませんでしたが、 幸い大きな不具合はありませんでした。蒸着の実施時期も通常の夏場 から10月から12月へと変更になりましたが、夏場と比べ天候条件が
悪く、山頂に行けない日も3日ありました。さらにベテラン職員の退
職や異動もあって、若手職員への技術継承も問題になりました(これ を書いている私も、今回が初めての主鏡再蒸着でした)。
このように多くの困難がありましたが、今回も無事に作業を完了す ることができました。これもひとえに、作業を行ったハワイ観測所職 員をはじめ、長期出張して支援していただいた他のブランチの皆様、 さらに三鷹執行部、そして望遠鏡ユーザーの皆様のご尽力・ご協力が あったからと思います。この場を借りて御礼申し上げます。ありがと うございました。
すばる望遠鏡第8回主鏡再蒸着
沖田博文
(ハワイ観測所)お
し
ら
せ
No.
03
2 0 1 7
10
0 2 -12
1 4ドーム1F に設置・保管している蒸着関連装置。蒸着直 前に試運転を行いました。
毎日ミーティングを行い、作業内容と手順の確認、意 識合わせを行い、安全第一を心掛けました。
冬期のマウナケア山頂は天候も悪く、スケジュール変 更も重なり大変な作業となりました(撮影:瀧浦晃基)。
望遠鏡に取り付けられている周辺機器を専用の治具や
台車等を使って取り外していきます。 平行して主鏡洗浄に使う薬品の調合も行いました。 主鏡と望遠鏡の一部(主鏡セル)を慎重にドーム1F に輸送します。
主鏡ハンドリング装置を使って主鏡を主鏡セルから取 り外します。
主鏡を蒸着下釜にのせて1次洗浄に備えます。全体的に 白っぽく汚れています。
1次洗浄。まずブラシと洗剤で汚れを落とし、次に薬品 で古いアルミコートを溶解除去します。
主鏡セルの取り外されたすばる望遠鏡。蒸着期間中に 様々なメンテナンスも平行して行いました。
主鏡傷検査。主鏡の上に乗って目視で傷の確認を行い ます。この作業後、傷修復、2次洗浄を行いました。
真空蒸着釜(の上半分)。この大きな真空容器を用いて アルミニウムを真空蒸着法で主鏡にコーティングします。
01
02
03
04
05
06
07
08
09
コーティングは288本のフィラメントによって行います。
まさにアルミニウムが蒸発してコーティングが行われ ている瞬間の写真。
蒸着後は釜から取り出し、仕上り確認を行いました。副所長より合格の判定をいただきました。反射率も回復し、 ピカピカです。
蒸着後は望遠鏡を元に戻していきます。主鏡を主鏡ア
クチュエーターに慎重に搭載してきます。 主鏡搭載後、慎重に観測階まで運びあげます。 主鏡運搬台車と呼ばれる専用の大型装置を使って主鏡セルを望遠鏡に取り付けます。
(撮影:村井里江子)
ケーブル等も元通りに配線し、観測出来る状態に戻し ます。
望遠鏡が元通りになったら最後に実際の天体を使って 天体導入や主鏡の鏡面形状を校正するデータの再取得 を行いました。今回は9夜かけて行いました(写真は過 去に実施のもの)。
みなさん、
お疲れ様でした!
13
14
15
16
17
18
19
18
2017年11月13日から17日の5日間、石 垣島にて「East Asian Young Astronomers Meeting( 以 下EAYAM)2017」 を 開 催
しました。EAYAMは、東アジア中核天
文台連合EACOAのサポートのもとに 数年に一度開催されている東アジアの EACOA四地域(日本・台湾・韓国・中国) の若手研究者のための国際会議で、今回 の開催が6回目、日本での開催は2006年 の清里に続く2回目となります。EAYAM
の大きな特徴として、EAYAMの運営お
よび各地域の参加者の旅費・滞在費サ ポート用のグラントの確保はほぼすべて 東アジアの若手研究者の有志(その殆ど がポスドク)によって行われています。
今回の会議ではEACOA四地域、そ
してモンゴル・ベトナム・アメリカな
どから合計73名の参加がありました。
EAYAMの名にふさわしく、大学院生お
よびポスドクの参加者が全体の9割を占
めます。参加者の男女比は今回は3:1
とまだまだ欧米諸国で開催される国際会 議とは大きなギャップがあるものの、開 催のたびに、特に日本を除く東アジア地 域のジェンダーギャップは埋まりつつあ ります。
EAYAM2017で は 大 き く3つ の ゴ ー ル を 設 定 し ま し た。1つ 目 は「 交 流 (interactions)」です。このEAYAMは東 アジア地域の若手天文学者が集う唯一の 国際会議であるだけでなく、同じ世代の つながりの機会を用意するため、あえて 分野を限定していません。そのため、今 回も近傍の彗星の研究から恒星・分子 雲・超新星爆発・活動銀河核・z~0-8
の幅広い赤方偏 移における銀河 進化、そして宇 宙論に至るまで バラエティあふ れるトークが行 われ、観測装置 もすばる望遠鏡、 ALMA、SMA、 JCMT、 そ し て 中国のLAMOST や東アジア間で 協力関係が存在 す るOISTERお
よびKJVNを用いた発表など、東アジア
の研究分野の傾向がよく捉えられた発表 内容となりました。また、発表以外にも コーヒーブレイクにおける時間も多く取 り、参加者どうしが議論を十分にできる 時間を確保しました。そのおかげで、日 を追うごとに知り合った参加者の議論の 輪が活発になっていくのを実感しました。 2つ目は「情報の共有(Sharing)」です。 東アジアには現在多くの観測装置が存在 しますが、その利用は各国単体で閉じて いることが多く、地理的に近い東アジア 地域にユーザーがあまり広がっていない 現状があります。そこで、東アジアの観 測装置情報・参加サーベイ情報・および 公募情報をシェアできるGoogle Maps を作成しました。現在少しずつ情報が増 えてきているところです。
3つ目は「共同研究(Collaboration)」
です。地理的に近い参加者がお互いに知 り、そして使用可能な観測装置情報を共 有することができれば、そこから共同研 究に繋がることも可能です。現在大学院 生である参加者も、今後ポスドクとなり 自己責任で共同研究をする立場になれば、 自ずと今回の参加者のつながりが将来の 共同研究につながると期待しています。 特に同世代の共同研究者は生涯にわたっ て大事な研究のパートナーとなっていく
はずです。実際、今回のEAYAMでは発
表の後に幾つかの人は発表内容について 後に深い議論を行い、共同研究の準備を していると聞いています。
また、今回は石垣島で会議を開催す るにあたり、参加者には石垣島の魅力 を、石垣島の方々には天文学の魅力を可 能な限りシェアすることも目指しました。 まず、参加者には石垣島の魅力を伝え る手段として、エクスカージョンを行い ました。石垣島の自然を堪能できる川平 湾などを訪れるだけではなく、東アジア VLBI観測網で活躍するVERA石垣島観 測局の見学や光赤外大学間連携の一端を 担う石垣島天文台のナイトツアーなどを 通して天文学における石垣島の役割を伝 えることができました。また、石垣島の 方々には、EAYAM LOCである国立天文 台PDの大宮正士氏およびEAYAMの招 待講演者の鈴木尚孝氏による一般講演会
を行い、30名以上の方々に対して、系
外惑星とダークエネルギーの研究の最先 端に触れていただきました。以上の活動
「East Asian Young Astronomers Meeting(EAYAM)2017」開催報告
市川幸平
(光赤外研究部)お
し
ら
せ
No.
04
2 0 1 7
11
1 3 - 1 7会議の様子。東アジア地域の若手研究者による最新の研究成果発表がありました。
のおかげかEAYAMの活動は石垣島のメ ディアにも大きく取り上げられ、研究会 開催中には2つのケーブルTV、および2 つの新聞から取材を受け、一般講演会も
含めて3つの新聞記事が掲載されました。
以上のように、EAYAM2017では、参 加者および石垣島の方々の両方のコミュ ニティに天文学を通した交流の機会を提 供することができましたが、会議を石垣 島で開催するに至ったのにはいくつか理
由があります。一つ目はEACOAのどの
地域からも地理的に近く、アクセスが容 易である点、そしてもう一つは天文学関 係の研究会や国際会議に関する多くの開 催実績があった点です。それに加え石垣 島天文台の花山氏からの心強いサポート があったことも理由の一つでした。石垣
島天文台とVERA石垣島局のエクスカー
ジョンでは、多くの参加者が望遠鏡と観
測装置の研究利用に興味を持ち、たくさ んの質問が飛んだことからも、石垣島で 開催してよかったと実感しています。
●最後に、本国際会議を開催するにあた り、国立天文台光赤外研究部の関口和寛 教授、国際連携室の蓮尾隆一室長、小宮 山浩子氏、松本瑞氏、事務部の大西智之 氏、小林香代氏からも多大なるサポート をいただきました。特に小宮山浩子氏に
はウェブサイトの管理・参加者のVISA
サポート・旅費補助サポートに関する参 加者とのやり取りをリードしていただく など、彼女なしでは今回の研究会に多く の参加者が集まることはできませんでし た。ここに改めて感謝します。
VERA 石垣島観測局にて。東アジア VLBI 観測網で活躍する口径20 m の電波望遠鏡に参加者は大いに関心を寄せ ていました。
石垣島天文台のナイトツアーでの一コマ。九州沖縄で最大の口径105 cm むりかぶし望遠鏡に関して多くの質問が 飛び交いました。
EAYAM2017開 催 に 伴 い、EAYAM最 終
日翌日に石垣島の方を対象にした公開講 演会を行い、30名以上の方々に参加して
いただけました。講演会は二部で構成さ れ、第一部は国立天文台太陽系外惑星探査 プロジェクト室特任研究員の大宮正士氏に 系外惑星研究の話をしていただきました。 「宇宙には我々と同じような生命はいるの か?」という大きな問いかけをモチベー ションに、天文学者が現在地球に似た惑星 を発見するに至るまでの流れを説明してい ただき、参加者は地球外生命体発見に天文 学者が近づいていることに驚いていたよう です。
第二部ではKavli IPMUの鈴木尚孝氏に
暗黒エネルギー発見に至るまでの流れを解 説していただきました。杞憂という故事
から観測的宇宙論の歴史をスタートさせ、 ダークエネルギー発見に至るまでのイベン トを重要人物を交えて紹介することで、参 加者全員がまるでドキュメンタリー映画を 見るかのように鈴木さんの話に聞き入って いました。これら2つの話のおかげで、そ
の後に行われた質問時間も大いに盛り上が りました。実はローカル新聞の取材もあり、 後日新聞記事にて公開講演会の様子を大々 的に掲載していただきました。
EAYAM2017 公開講演会
「天文学最前線 ~天文学における二大発見物語~」 開催報告
公開講演会の様子。「太陽系外惑星」と「宇宙の暗 黒エネルギー」の2つの講演がありました。参加者
はそれぞれの研究成果に熱心に耳を傾けていました。 ●本講演会にあたっては、地元の NPO 八重山星の